白数さんは、2024年春期講座に講師として、建築様式の基本知識を座学で、そのあと実際に建物を見て、様式の違いを学ぶフィールドワークを実施してくださいました。さらに、2025年春期でも「神戸から建築入門」に登壇していただきます。

本来の研究テーマは、自身のルーツ(出身地)の影響が色濃い
エントランス:
まずは、白数さんご自身についてお伺いします。もともとは広島県の呉の高専で建築の研究を始められて、テーマは旧日本軍の施設についてなんですね。白数さんが、旧日本軍の施設に興味を持った入り口は、やっぱり呉という場所と関係していますか?
白数さん:
絶対そうですね。そもそも生まれも育ちも広島市なんですよ。呉には、高専に入ってから住んでいました。呉で、建築系の研究テーマを選ぶときに、旧海軍関係の建物が候補に挙がるのは、ごく自然なことと言えるくらいに、関連している建物が今も残っているんです。明治期とか大正期のものなんですが。一方で、広島は被爆都市というだけではなくて、実は第五師団の本拠地があって軍都でもあったので、日清戦争の時は臨時首都が置かれていた、というような話もあるんですよ。
エントランス:
そうなんですね。
白数さん:
その影響で、海軍のこと(研究)をやって、修士でちょっと陸軍のこともやって、博士課程に入っている今、陸軍も海軍もどっちも扱いたいってなっちゃったんです。
研究職に残りたいんですけれど、研究職ではぜんぜん食べていけないんです(笑)
エントランス:
現在は大阪公立大学の博士課程で、引き続き、旧日本軍施設を専門に研究されているのですか?
白数さん:
そうですね。できれば今後も研究職に残りたいと思っているので。いや、もう食いそびれたら就職ですけど。これが食っていけないんですよ、なかなか。研究職ではぜんぜん食ってけないんです(笑)。
エントランス:
ご自身の研究とは別に、神戸では色々お仕事されていますね。エントランスで実施したフィールドワークのような建築案内(ガイド)も時々されているんですか?
白数さん:
そうですね、去年はお仕事をいくつか、いただいたので。いただいたお仕事は「全部やっちゃおう」って感じなので。ありがたく、やらせてもらってます。

神戸を褒めれば、みんな笑顔になってくれます
エントランス:
建築ガイドの時やエントランスの講座の時など、幅広い年齢層にお話する場合に、気をつけていることはありますか?
白数さん:
僕がいただいたお仕事だと、エントランスが一番平均年齢低かったと思います。
エントランス:
え?そうなんですね!それは意外でした。
白数さん:
例えば、観光局さんからいただくお仕事の1つで「神戸のとびら」は単価が高いせいか、年齢層も高いんです。
エントランス:
その層に向けて建築案内するときに、工夫されてることはありますか?
白数さん:
基本的に神戸の方々は神戸が大好きなので、神戸を褒めておけば、みんな笑顔になってくれるっていうのはあるんですよ。
エントランス:
確かに(笑)。
バブル以前にも良い時代があったし、さらに神戸には、震災を乗り越えた歴史もある
白数さん:
もちろん、ただ褒めるだけではなくて、ツアーに参加されている方々は震災を乗り越えた世代だから、その人たちが仰る「昔の神戸は良かった」の中身をちゃんと分かってないといけないと思います。そのためにはバブルの時代だけを一括りにせず、70年代80年代の北野の黄金期の建物も取り上げること。「ローズガーデン」なんかも、そこに含まれます。異人館とかが保存されてきた歴史があって、震災を乗り越えた歴史があって、そこも交えて建物ツアーするようにしました。
他にも、実は保存運動をやってた先生がいたから、開発ブームを乗り越えられた(古い建物を残すことができた)経緯があったんですね。なので、そんな時にキーパーソンになっていた人の名前を、ちゃんと紹介することも忘れないようにしています。
僕としては建物のファンが増えてほしいんですよ
エントランス:
ただ専門的なお話だけするよりも、ツアーの参加者が知っていることに、少し新しい情報や、ちょっと深くて狭いところの情報を盛り込む形の方が、反応が良い印象はありますか?
白数さん:
そうだとは思いますね。でも、参加者の反応良くするっていうのは(ゴールではなく)あくまで過程で、僕としては建物のファンが増えて欲しいんですよ。ファンの定義って難しいですけど、僕的には、僕が喋ったことを聞いた第二者が、第三者に自分ごとのように話してくれたら「ファン成立」だと思うんです。ただし、第二者が第三者に話すときには、自分の経験に結びついておかないといけない。だから僕は、第二者が一番喜んでくれる反応(本人の経験となるもの)を、何とかして引き出したいと思って取り組んでいます。

北野に点在する「安藤忠雄」建築を紹介します
エントランス:
白数さんには、2025年の春期講座にも登壇していただきます。今回は、どんな講座を予定されているんですか?
白数さん:
北野という、それほど広くないエリアに「ローズガーデン」をはじめとして、安藤忠雄建築がいくつも存在するんです。その謎について、お話したいと思います(笑)。
エントランス:
それは、とても楽しみです!本日は、ありがとうございました。